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十勝を釣る道具

十勝に初めて訪れるアングラーやフライフィッシングのキャリアが短い人のための、十勝のマスたちを釣るための現実的道具ガイド。

このページでは十勝のフィールドで十勝のマスを効率よく釣ることに特化した現実的な釣り道具について紹介しています。フライフィッシングは魚とフィールドあっての遊び。肝心な魚や現場のことより、道具やスタイルなどが先では結果は推して知るべしです。起点にしたのは、北海道のマスとフィールドの実際。このガイドでは、状況に応じて的確により多くのマスを釣るための道具に特化し、デザインや時流、スタイルや味わいなど、釣り人の嗜好性に関する記述はできるかぎり省きました。十勝のフィールドで釣りをしたことのない方や、キャリアが短い方などは遠征の前にぜひご覧あれ。

(2023年3月に加筆・修正)New!

(注意)以下にまとめているそれぞれタックルは、ラインの重さを基準にしています。たとえば下の「4番ライン用シングルハンド・ロッド」の場合、ラインは文字どおりAFFTA基準の4番(先端から30フィートの重さが約120グレイン)を差していますが、ラインを通すロッドは4番指定のものとは限りません。3番あるいは5番ライン指定のロッドでもいいと思います(理由は、ロッドに表示されたパワーは各メーカーの絶対的なものであるため)。

 いずれもそれぞれのラインで、おもに釣る距離に応じて荷重をかけてキャストできるよう、自分のスキルや目的に合った適切な調子あるいは適切なパワーのロッドをご用意なさることをおすすめいたします。ラインの番手ごとに記載したフライサイズ(カテゴリーによっては飛距離も)などについても下記が世界的な標準といってよいと思います。

 北海道のみならず、世界のさまざまな場所でマス釣りをする際も参考にしていただくことができます。お会いして釣りを拝見したことがある初回ご利用日以降のゲストさまに関しては、バランスのチェックなど、ご希望に応じてポロシリがサポートいたします。お気軽にご相談ください。

9フィート半以下のライトライン用ロッド

 9フィート6インチ以下の長さのロッド群も状況に合わせて用意しておくとよい。規模の小さな山岳渓流の釣りや小河川の釣りに使う。ラインの番手は用いるフライのサイズに合わせるのが基本。樹木が低く繁茂した場所が続く川など、必要なレングスが8フィート以下なら、素材はグラファイトのみならずファイバーグラスや竹などを使ったロッドも現実的だ。小渓流の釣りが好きな人向けのグループ。

2〜4番ライン用シングルハンド・ロッド

 3番ラインならフライは16番前後、距離は12m程度まで、4番なら15m以下、10番程度までの小〜中型フライに使う。ドライフライ・フィッシングを中心に軽快さにこだわるならレングスは9フィート半まで。さまざまなメソッドでの利用を考えるなら、9フィート半以上のものがよい。使うのはDTやWFのフローティングラインなど。マスのサイズ、使うフライサイズを考りょしてラインを選ぶ。

5番ライン用シングルハンド・ロッド

 8番〜20番までのフライを使い、6m程度の近距離からおよそ18mまでの距離に用いるロッド群。ドライフライの釣りなど軽快さを求めるならレングスは9フィート半までが◯。さまざまなメソッドをこなす汎用性を求めるなら9フィート半以上がよい。使うのはDTやWFのフローティングラインのほかシンキングラインなど。大型魚にも安心して対応できる。釣りの内容しだいで、スティルウオーターの釣りに用いることも。


6〜7番ライン用シングルハンド・ロッド

 6番ラインの適合フライサイズは6〜18番、7番ラインなら4〜16番、距離は20m程度までの釣りに使う。バンクフィッシングはもとより、ボートなどウオータークラフトからの各種の釣りに欠かせない。釣りの内容や目的に応じてDTまたはWFのフローティングライン、インターミディエイトライン、シンキングラインなどを使う。日本ではST+シューティングラインの組み合わせが人気。スティルウオーターのウエーディング時やボートで使うなら、9フィート半以上のレングスが長いのものがよい。スティルウオーターでは必携のロッド群。

8〜9番ライン用シングルハンド・ロッド

 8番ラインならフックサイズ2番くらいまで、9番なら1/0番程度までの大型フライを使う際に用いるロッド群。スティルウオーターでは、ワカサギのイミテーションをはじめ超大型のフライを使う釣りの際はもちろん、飛距離とパワーが必要な水深20ft以上のコラムを連続してねらう時、強風時の釣りなどに欠かせない。海では場所によってショアからのカラフトマス釣りにも○。DTやWFのフローティングライン、各種シンキングライン、各種ST+シューティングラインの組み合わせなどを使う。8番ライン用のロッドの使用頻度は低くないと思う。

ユーロニンフ・ロッド

 ラインの番手は、使うフライサイズや重さと数、対象魚の大きさなどに合わせて選ぶ。レングスを選ぶ基準の一つは河川の規模。川幅5m以下なら9フィート半まで、8m未満なら10フィート、平均15m未満なら10フィート半、幅15m以上なら11フィート〜。河川の規模にかかわらずレングスの長いロッドを使うことも。ニンフはもちろん、ストリーマーやウエットフライの釣りをはじめドライフライ・フィッシングに用いることも。レングスによる恩恵は大きく、汎用性が高い。河川のマス釣りに使う。



フライラインについて

 ラインの種類およびラインのウエイト選びは、用いるフライ(使用するフライのサイズや空気抵抗、重さなど)と釣り方を決めるところがスタート地点。至上の目的が魚を釣ることなら、道具選びは現場を鑑みることから始めたい。

 ラインの番手選びのミスの例をあげてみよう。たとえば、使うフライが#2サイズかつ重いものとして、18m以上の距離をコンスタントにキャストするなら先端30フィートが160グレインの6番ラインではパワー不足だ。あたりまえのことだが、使うフライのサイズや種類(あるいは仕掛け全体)を決めてこそ、適切なラインの種類および番手を選ぶことができる。

 日本では、スティルウオーターで使うラインはST(シューティングテーパー)とシューティングラインの組み合わせが一般的だが、飛距離が至上の目的でなければ、WFラインがよい。WFはロングラインのコントロール性(特にフローティングライン)やターンオーバーのアビリティに優位性があり、強風時のトラブルも最小限に抑えることができる。詳しくはこちら>

 またバックキャスト・ルームがある場所なら、スペイ系ラインより一般的なWFラインを選択するとよい。各種スペイキャストではからまりやすいマルチフライなど、複雑なリグでもタングルしづらく使いやすい。汎用性が高く利点がある。

 川でシングルハンド・ロッドで使うフローティングラインだが、汎用性はDTのほうが高い。特にロングラインのコントロール性はWFより優れている。本流などではDTが使いやすい場面も少なくない。釣りの内容と目的に合わせて選びたい。

 ガイドフィッシング時なら釣りに必要なライン(およびロッド)を事前にガイドに聞けばよい。川、湖沼などスティルウオーターから海まで。ドライフライ・フィッシングからストリーマーの釣りまで。さらには、バンクフィッシングからボートの釣りまでというように、釣りの守備範囲が広く経験豊かなガイドなら、希望した釣りに適切なラインを教えてくれるはずだ。

 フライ、ティペット、リーダーなどについでマスに近い道具であるフライラインは、時にロッドよりも、時間と費用をかけてもっとも慎重に選ぶべき道具だ。


フライロッドについて

 本ウェブサイトでは、ロッドのキャラクターを形容する言葉として、アクションとパワーの二つを分けています。アクションは、ブランクが最初に曲がる場所(ロックアップ・ポイントなどと呼ばれています)とどのような角度で曲がるかを示しています。ティップトップに近い場所から曲がる順に、ファスト、モデレートファスト、モデレートのように形容しています。パワーは、ブランクをたわませるのに必要な相対的な力(詳しくはこちら>)を差しています。(相対的に)硬い、柔らかい、あるいは重さを示すラインナンバーなどで表現することもあります。

 StiffとFastは混同されて使われていることが多く、誤って両方を混ぜて表現されていることがありますが、本稿ではその点に留意し回避しています

 一部の釣りのためのものを除けば、マス釣り用のシングルハンド・ロッドを選ぶ時は最長飛距離の能力より現実的な釣りにおけるキャスティングレンジでの扱いやすさに留意したい。これは、競技会で上位を競えるような超ロングキャストはできなくてもよいから、実用範囲の距離を快適にこなせるロッドが使いやすいということだ。

 たとえば同じ5番指定でも相対的に硬いシャフトに規格どおりの重さのラインを使った際、6m程度のショートレンジを投げる時にはライン負荷が小さいため、シャフトを曲げることができずキャスティングが不慣れな人には扱いづらい(ガイド時によく見受けられる)。

 一方で、12mくらいの距離をできる限り少ないフォルスキャストでプレゼンテーションしなければならない時に(北海道ではたまに遭遇する状況だ)、国産のヤマメ・イワナ釣り用のロッドに見られるような、ラベリングされた番手に対して相対的なパワーが小さく柔らか、かつモデレートアクションのサオを使うと、ミスが発生しやすい。

 距離を出すことで加わったライン負荷によるシャフトの大きな曲がりを調整できず、テイリングループなどのトラブルを多発させてしまうゲストも少なくない。

 同様に多いミスだが、飛距離を伸ばそうと何度もフォルスキャストしてしまい、肝心のマスを驚かせてスプークさせてしまうアングラーも。

 実用的な距離を重視してデザインされたシャフトならそんな失敗を最小限に抑えてくれる。フィールドでキャストする距離を考りょするのはもちろん、釣りの際は自分のキャスティング能力に見合ったロッドをチョイスしたい(たとえば、12m以上は的確に投げられないという人に、27mのラインすべてを楽にキャストできるようなロッドは不要といってよい)。

 シングルハンド・ロッドのメソッド面での汎用性について。たとえば、各種のニンフィングをするなら、レングスの短いロッドは概してビギナーにはひどく不便だ。これはディープウエーディング時や、フロートチューブやポンツーンからの釣りの時も同じ。水面からの高さが低い時はロッドのレングスは長いほうが何かと融通が効く。注意点が一つ。有名メーカーがリリースした高級ロッドですら、レングスの長いロッドには”持ち重り感”がつよいものもある。こんな時は組み合わせるリールの重さに留意したい。

 昨今、専門誌では低番手ショートロッドの特集を目にすることもある。ショートロッドのメリットの一つは、同じ素材なら相対的にファストアクションになるためタイトループが作りやすいこと。しかしながらたとえロングロッドであっても使い手のテクニックしだいで補完することができる。また、どんなロッドでもしゃがんでキャストすれば

ループが通過する高さを2〜3フィートほど下げることができるが、ショートロッドを長くすることはできない。通常のリストのポジションより腕を上げてキャストしてもせいぜい1フィートほど高くなるだけだ。

 やむをえずディープウエーディングをする時はもちろん、フローティングラインのメンディング、シンキングラインのリトリーブ時のコースの選択など、キャスト後のラインコントロール時もロングロッドが有利だ。

 ロッドの短さは身体では補えない部分が多い(ハンディキャップがあるから面白いんじゃないか! という意見にはおおいに賛成だが、嗜好性にかかわる話ゆえこのページでは割愛する>別記あり)。一方で、ロッドの長さがアングラーを補ってくれる場面は少なくない。小柄な人ならなおさらだ。また、ドライフライ、ニンフ、ウエットフライというように、状況に応じて臨機応変にいろんなメソッドを用いたい、けれど1本のロッドですませたい。そんなミニマリストなら迷わずロングロッドを選ぶとよい。

 ロングロッドの物理的かつ相対的な特徴の一つは、レングスが長くなればなるほど、アクションがどうしてもダルになる傾向がある点だが、これはセットアップするラインによって多少は調整することができる。

 もう1点。ヤマメ、イワナ用にデザインされたような、相対的に柔らかい国産のロッドは、たとえ同じ3番や4番ライン指定のロッドでも、多くの人がワイルドの大型ニジマスを相手に短時間にネットに入れられるだけのパワーがない。やりとりに時間がかかればマスに与えるダメージは大きくなり、水温が高い時期は、釣った魚を蘇生できない事態も発生する。リリースを前提としているなら、大型のニジマスをねらう際は必ずマス用に設計されたロッドを使いたい。

 これはルールではないがマナーではないだろうか。資源には限りがある。魚が釣れれば何をしてもよいわけではないと思うが、いかがだろう。

 

  さて、本来はラインの次に選ぶべき道具がフライロッドだが、ロッドに記された番手は相対的なものではなく、ほとんどがメーカーによる絶対的なもので、同じ番手でもパワーは各社で異なる。そのため先にロッドの評価を行ない、それで得た相対的なパワーを目安にラインを選ぶのも一つの方法だ。

 具体的な例を挙げるなら、「手元の7番ロッドは実質8番のパワー→グレインウエイトが210グレインの8番ラインを選んだ」のようにマッチングさせてもよい。しかしながら、基本の考え方は原則的にラインありきであることをお忘れなく。


フライリールについて

1970年代のボグダンと1900年代初頭のハーディー。いずれもフライフィッシングを象徴するような存在で多くのアングラーが憧れるフライリール。でも、これじゃなくても釣りは楽しめます。
1970年代のボグダンと1900年代初頭のハーディー。いずれもフライフィッシングを象徴するような存在で多くのアングラーが憧れるフライリール。でも、これじゃなくても釣りは楽しめます。

 必要なフライラインの選定、それをキャストできるロッド選びときていちばん最後に選びたいのがフライリール。この順番をすすめる理由はシンプル。

 対象魚やフィールド、使うフライや釣り方が決まらなければラインを決めらない、ラインが決まらなければバッキングラインを含むリールに必要なキャパシティがわからない、決めたラインを適切にキャストできるロッドが決まらなければ、ロッドに見合う適切な重量のリールをチョイスできないから。全体の総重量が軽い低番手のタックルなら自由度もあれど、レングスの長い高番手のツーハンド・ロッドのタックルなどでは、重量のバランスしだいで取り回しのよさや疲労度が変わってくる。

 北海道の対象魚の多くはワイルドのニジマス。時には生涯のレコードになるような魚に出会うこともある。本州以南のいわば渓流のフライフィッシングのように30㎝程度までのヤマメ、イワナがおもな相手でないにもかかわらず、状況しだいでは細イトを使う釣りをしいられることも少なくない。相応の準備があれば憂いなしだ。

 

 十勝の対象魚やフィールドの実際から実用面を鑑みたさい、現在最も無難なフライリールのチョイスは、ラージアーバーのスプールと調整幅の広い滑らかな滑り出しのディスクドラグを擁したモダンなフライリールだ。軽量化された昨今のグラファイト製ロッドと一緒に使うなら重さのバランスもいちばんよい。

 使う前にドラグの滑り出しをティペット強度の約1/3に調整しておくことがリールの能力を発揮させる条件だが、いつどんな状況で大型を掛けてもデメリットが少なく、ネットに入れる確率を上げることに貢献してくれる。設定した負荷に応じてオートマチカリーにスプールが逆転を始めてくれるディスクドラッグのリールは、キャリアの短いアングラーにとってなにかと心強い実用品だ。

 ガイド時によく見られるのは、ドラグの負荷を設定していない(ほとんど抵抗なく逆転する状態)ディスクドラッグのリール。こまめに負荷を設定する習慣がないのなら、同じラージアーバーのリールでも、常時適度の抵抗をかけられるクリックタイプのもの

がよい。ほかセミオートマティック・フライリールという選択肢もある。

 シーズン中毎日ゲストを案内していて現場でのトラブルがいちばん多いと感じるのもフライリール。高価な商品でも本体とスプールの隙間からラインが出てきたりラインを噛んでしまうものもある。軽量化されたスプールのほとんどがむきだしになったリールなどは、ちょっとした衝撃で変形してスプールが回転しなくなり釣りを中断してしまうケースも。ディスクドラッグのリールの中には、逆転時の負荷が突然かからなくなる傾向不良が見受けられるものもある(密閉式をうたいながらも内部に錆が発生するものも)。両軸リールなどではスプールと本体の隙間からリーダーが内部に入ってスピンドルに巻きついてしまい、ドライバーなどでネジを外して分解しなければならないものも。コストも時間もかかった遠征の釣りなのだから、凝ったデザインや必要いじょうの軽量化をはかったものより、堅牢性や機能の安定性を重視して選びたい。

 

 数種類のシューティングラインや複数のラインを使い分ける釣りには、スペアスプールを用意するか、はじめからカセットリールを選ぶとよい。

 2〜5番のライトライン用に1台、6〜8番ライン用に1台の、2サイズ計2台のカセットリールと、それぞれに必要な数のスペアスプール(2,000円〜)があれば、正直な話、マス釣り用のフライリールはこと足りてしまう。大手メーカーのカセットリールなら、ブレーキなどの機能面も必要十分だ。また、これらのスプールにはハンドルが付いていないから、パッキングの際もすっきり収納しやすい。遠征にも便利だ。

 リールを複数持参すれば荷物が重くなるうえかさばるから、遠征の釣りでは現実的とはいえない。スプールの脱着にコインなど工具が必要なリールも同じで、時間や効率など現場を優先するなら、スプール交換が簡単なものを選びたい。

 フライリールの重量は、軽ければ軽いほどロッド本来のアクションを活かすことができる。しかしながら、重さ・長さのあるロッドに軽すぎるリールの組み合わせはバランスが悪く、”持ち重り感”のため操作性が悪くなるケースもある。