スティルウオーターの”私的”フライライン選び

スティルウオーター用タックルのセットアップ、中でもフライラインの選択は誰もが気になるところ。ここでは、フローティングラインからシンキンングラインまで、ガイドが湖やリザーバーなどスティルウオーターのマス釣りで愛用している”私的”フライライン群をご紹介します。掲載しているのはすべてシングルハンド・ロッド用ウエイトフォワード(WF)ライン。STが好きな方はヘッド後端などでカットしてホームメイドのSTにして使ってみるのもいいかも。Google検索してわかったのですが、現在も日本国内のスティルウオーターの釣りはST+シューティングラインが主流であるためか、以下に紹介したWFライン群にかかわる日本語の記事は、テキストを書いた時点(2021年1月)でもオンラインショップなどの商品ページを除きインターネット上に見当たりませんでした。ロッドとの効果的なセットアップ(重要)については別途ご案内します。(2023年2月に加筆・修正)

すべてが”ほどよいバランス”の定番ライン

CORTLAND 444PEACH

 スティルウオーターで使っているフローティングラインの一つがこちら、CORTLAND社のクラシックシリーズ「444 PEACH」のWFです。

 キャリアの長いアングラーにはよく知られたロングセラーの定番ラインですが、スティルウオーターの釣りが盛んな欧州の、中でもコンペティターたちにひじょうに支持されている1本で、割高感がある輸入品であるにもかかわらず彼の地の多くのオンラインショップで販売されています。

 特徴の一つは”長くない”絶妙なヘッド。ヘッド全長を32ft(約9.8m)にデザインされているためロングラインのコントロールは得意ではありません。同じ理由からロングキャストが楽にできるというラインでもありません。

 一方で、最低限の回数のフォルスキャストで”ほどよい距離”のキャストをきわめて速やかに完了できます。そのため、飛距離さえ見合えば、スピードを要求されるライズやボイルの釣りにとても効果的です。また、ヘッドのレングスからもわかるよう背後のバックキャスト・ルームにゆとりがないバンクフィッシングにも適当。これらはすべてヘッド部のデザインの恩恵のようです。

 入力しだいでは繊細さやデリカシーのあるプレゼンテーションもこなしてくれますから、風のない日のフラットな水面でのライズフィッシングも得意です。ユスリカの羽化期のドライフライ・フィッシングや小さな陸生昆虫を捕食するピッキーなマスをねらう時など、出番は少なくありません。

 ナイロンブレイデッドのコアは素材相応の伸びがあるようですが、とりたてて気になったことはありません。むしろ、釣りの内容しだいでは利点になることも少なくないような。氷点下でも及第点のしなやかさを保ち、コイル状のメモリー

最新ライン群の中では独特といえるしっとりとしたラインの感触はもちろん、昔と変わらぬ色も好き。ヘッド部は短めにデザインされているため相対的に飛距離をだせるラインではない。
最新ライン群の中では独特といえるしっとりとしたラインの感触はもちろん、昔と変わらぬ色も好き。ヘッド部は短めにデザインされているため相対的に飛距離をだせるラインではない。

もほとんど感じられません。使っていてとても気持ちがよく、思わず手が伸びてしまうラインです。(2023年3月加筆・修正)


世界のスティルウオーターの釣りの実際から

Airflo社製スティルウオーター用シンキングライン

 バンクフィッシングであれボートであれ、世界でスティルウオーターのマス釣りがもっとも盛んな地域といえば欧州がその筆頭です。その証左の一つといえるのが、年間をとおして頻繁に開催されているさまざまな試合です。ここでは詳しい説明は省きますが、彼の地のコンペティターこそ世界のスティルウオーターのマス釣りの頂点に君臨しているといっても過言ではありません。

 そして、彼らにもっとも普及しているシンキングラインがAirflo社のシングルハンド・ロッド用WFラインです。同社は名だたるリザーバーのお膝元にあって、マスと熱狂的なアングラーから日々洗練を受けています。ラインがよくならない理由がありません。私は過去東京でF.F.専門誌の編集者をやっていましたが、日本で海外の情報といえば大半が米国寄りあるいは米国経由のもので、FIPS-MOUCHE主催のチャンピオンシップに出場するまで、前述のような欧州および世界のスティルウオーターのマス釣りの実際をよく知りませんでした。なんてこったか!

 国際大会への参戦を機に、インターミディエイトを含む私のシンキングラインは、その”ほとんど”がAirflo社製のラインになりました。日本のアングラーに人気のシングルハンド・ロッド用STラインは製造していないので国内での人気は及第点かもしれませんが、その総合力の高さはユーザーのみぞ知るところです。

  実際、同社のポリウレタン製シンキングラインは低温時もしなやか。コイル状のメモリーはほとんど感じられません。マス釣りのどんな状況下でも操作性は良好で、モノコアのラインなど一部を除けば、-5℃でもラインがごわつくことは一切ありません。コアの主力は低伸縮素材で伸びが小さく感度が高く(よく考りょして使うべき特性です)、キャスト時のラインスピードも上げてくれます。また、シックスセンスはランニングセクションも適度な太さと重さがあるため、強風時に風にあおられて絡んだりキンクするトラブルもほとんどなし。46フィート(約14m)と長くデザインされたヘッドは飛距離に貢献してくれます。さらに、同社製ラインの多くが、パッケージに表示されたシンクレートに正確です。

 前述した”ほとんど”になってしまう理由です。シンキングラインのシンクレートはメーカーごとに基準(および測定方法)が異なるのか、いずれも毎秒1インチ沈むと表示されたラインが、A社製は実質秒速1.5インチ、B社では1.25インチ沈むなどの誤差があります。こんな実態から複数のメーカーのシンキングラインを

道東の湖のバンクフィッシングでも使用頻度のたかいシックスセンスのスロー・インターミディエイト(下と右上)とファスト・インターミディエイト(左上)。釣れます!
道東の湖のバンクフィッシングでも使用頻度のたかいシックスセンスのスロー・インターミディエイト(下と右上)とファスト・インターミディエイト(左上)。釣れます!

不用意に混同すれば、沈下速度にほとんど差のないラインを重複して使いかねません。そんな理由から、私は現在その”ほとんど”をAirflo社製のラインで揃えています。もちろんほかにも、あるメーカーの古いタイプⅠやタイプⅡ、タイプⅢ(いずれも廃盤品)のように、よく釣れて実績がある、総合力としてじつに優秀なWFライン群が今も手元にあるので悩ましいところではありますが。

 主観ですが、同社のラインを使って気づいた点が二つ。一つめは、本社のウェブ。以前より改善されたとはいえラインの仕様がわからない箇所があります。商品によってはグレインウエイト(先端30フィートの重さ)のデータすらなく、ラインの大まかな重さすらつかめません。もう一つは、日本に輸入されていないスティルウオーター用シンキングラインがあること。それらについては海外のフライショップなどから買うしかありません。(2021年1月)


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