スティルウオーター用タックルのセットアップ、中でもフライラインの選択は誰もが気になるところ。ここでは、フローティングラインからシンキンングラインまで、ガイドが湖やリザーバーなどスティルウオーターのマス釣りで愛用している”私的”フライライン群をご紹介します。掲載しているのはすべてシングルハンド・ロッド用ウエイトフォワード(WF)ライン。STが好きな方はヘッド後端などでカットしてホームメイドのSTにして使ってみるのもいいかも。Google検索してわかったのですが、現在も日本国内のスティルウオーターの釣りはST+シューティングラインが主流であるためか、以下に紹介したWFライン群にかかわる日本語の記事は、テキストを書いた時点(2021年1月)でもオンラインショップなどの商品ページを除きインターネット上に見当たりませんでした。ロッドとの効果的なセットアップ(重要)についてはガイドご予約以降に別途ご案内します。
ユスリカに始まりセミやワカサギ、陸生昆虫など、湖やリザーバーのドライフライ・フィッシングに欠かせないWFのフローティングライン。近年私が愛用しているラインの一つがこれ、RIO社の「Elite RIO Gold」です。
早春や晩秋の低温時もラインはしなやかで、これまで顕著な巻きぐせが出たりしたことはありません。30ftほどの短い距離はもちろん、適度なレングスのヘッド(番手により異なる)の恩恵により75ft以上のキャストもスキルしだいで容易です。また、風や流れによってドラッグが生じる時はもちろん(”ドラッグをかけたい時”にも大切なポイントですが)、さまざまな距離でのあらゆるラインコントロールのアビリティに極端な偏りがありません。これはとても大きい。
短くデザインされたフロントテーパーがもたらす力強くアグレッシブなターンオーバーは、ストライクインジケーターのついた仕掛けや大型フライのプレゼンテーションにぴったり。浮力も滑りも申し分ありません。ランニングセクションは適度の太さがあり、回収したラインが強風にあおられて浮き上がった際、絡んだりキンクするなどのトラブルがほとんどありません。
また、私にとってスティルウオーター用のフローティングラインは、ドライフライの釣りのみならず水面下のさまざまな釣りに使うラインです。リトリーブ中のテイクの感知や速やかなアワセを鑑みればコイル状になりづらく伸びを最低限に抑えたラインが理想です。そんな観点からGoldでももっとも低伸縮のコアを採用したEliteを選んでいます。感度は良好です。
フライライン・メーカー大手各社がスティルウオーター向きとしている最新トップエンドをそれぞれ使ってみましたが、主観ではこの1本が欠かせません。多くの局面で安心して使うことができるオールラウンダーであり、スティルウオーターの試合が盛んな欧州でも人気のラインです。
スティルウオーターで使っているもう一つのフローティングラインがこちら、CORTLAND社のクラシックシリーズ「444 PEACH」のWFです。
キャリアの長いアングラーにはよく知られたロングセラーの定番ラインですが、スティルウオーターの釣りが盛んな欧州の、中でもコンペティターたちにひじょうに支持されている1本で、割高感がある輸入品であるにもかかわらず彼の地の多くのオンラインショップで販売されています。
特徴の一つは”短すぎず長くない”絶妙なヘッド。ヘッド全長を32ft(約9.8m)にデザインされているためロングラインのコントロールは得意ではありません。同じ理由からロングキャストがとりわけ楽にできるというわけでもありません。
一方で、最低限の回数のフォルスキャストで”ほどよい距離”のキャストをきわめて速やかに完了できます。そのため、飛距離さえ見合えば、スピードを要求されるライズやボイルの釣りにとても効果的です。また、ヘッドのレングスからもわかるよう背後のバックキャスト・ルームにゆとりがないバンクフィッシングにも適当。これらはすべてヘッドのデザインの恩恵のようです。
先に紹介したRIO Goldに比べるとターンオーバーには少しだけ”時間”が与えられています。入力しだいでは繊細さやデリカシーのあるプレゼンテーションもこなしてくれますから、風のない日のフラットな水面でのライズフィッシングも得意です。ユスリカの羽化期のドライフライ・フィッシングや小さな陸生昆虫を捕食するピッキーなマスをねらう時など、出番は少なくありません。
ナイロンブレイデッドのコアは素材相応の伸びがあるようですがとりたてて気になったことはありません。氷点下でも及第点のしなやかさを保ち、コイル状のメモリーもほとんど感じられません。釣りの内容や目的、状況に合わせて前出の「Elite RIO Gold」と使い分けています。キャストしてもリトリーブしても生理的にとても気持ちがよく、思わず手が伸びてしまうラインです。
テーパーやグレインウエイトがちかいのも大きな要因ですが、WF8Fをマイクロメーターで計測すると、ウエルデッドループのすぐ後ろ、ボディ中央付近、ランニングラインなどの直径はElite RIO Goldとほぼ同じ数値でした。
本ラインにとてもよく似たキャラクターのフローティングラインにRIOのPerceptionがあります。こちらのほうがヘッドがほんの少し長めです。参考までに。(2021年1月)
バンクフィッシングであれボートであれ、世界でスティルウオーターのマス釣りがもっとも盛んな地域といえば欧州がその筆頭です。その証左の一つといえるのが、年間をとおして頻繁に開催されているさまざまな試合です。ここでは詳しい説明は省きますが、彼の地のコンペティターこそ世界のスティルウオーターのマス釣りの頂点に君臨しているといっても過言ではありません。
そして、彼らにもっとも普及しているシンキングラインがAirflo社のシングルハンド・ロッド用WFラインです。同社は名だたるリザーバーのお膝元にあって、マスと熱狂的なアングラーから日々洗練を受けています。ラインがよくならない理由がありません。私は過去東京でF.F.専門誌の編集者をやっていましたが、日本で海外の情報といえば大半が米国寄りあるいは米国経由のもので、FIPS-MOUCHE主催のチャンピオンシップに出場するまで、前述のような欧州および世界のスティルウオーターのマス釣りの実際をよく知りませんでした。なんてこったか!
国際大会への参戦を機に、インターミディエイトを含む私のシンキングラインは、その”ほとんど”がAirflo社製のラインになりました。日本のアングラーに人気のシングルハンド・ロッド用STラインは製造していないので国内での人気は及第点かもしれませんが、その総合力の高さはユーザーのみぞ知るところです。
実際、同社のポリウレタン製シンキングラインは低温時もしなやか。コイル状のメモリーはほとんど感じられません。マス釣りのどんな状況下でも操作性は良好です。驚くべきことに-5度でもラインがごわつくことは一切ありません(モノコアのラインなど一部ラインを除く)。コアの主力は低伸縮素材で他社のラインと比べて感度がたいへん高く、キャスト時のラインスピードも上げてくれます。また、シックスセンスはランニングセクションも適度な太さと重さがあるため、強風時に風にあおられて絡んだりキンクするトラブルもほとんどなし。46フィート(約14m)と長くデザインされたヘッドは飛距離に貢献してくれます。さらに、同社製ラインの多くが、パッケージに表示されたシンクレートに正確です。
前述した”ほとんど”になってしまう理由です。シンキングラインのシンクレートはメーカーごとに基準(または測定方法)が異なるのか、いずれも毎秒1インチ沈むと表示されたラインが、A社製は実質秒速0.75インチ、B社では1.25インチ沈むなどの誤差があります。こんな実態から複数のメーカーのシンキングライン
を不用意に混同すれば、沈下速度にほとんど差のないラインを重複して使いかねません。そんな理由から、私は現在その”ほとんど”をAirflo社製のラインで揃えています。もちろん、ほかにもS社の古いタイプⅠやタイプⅡ(いずれも廃盤品)のように、使いやすくて実績がある、じつに優秀なWFライン群が今も手元にあるので悩ましいところではありますが。
主観ですが、同社のラインを使って気づいた点が二つ。一つめは、本社のウェブ。以前より改善されたとはいえラインの仕様がわからない箇所があります。商品によってはグレインウエイト(先端30フィートの重さ)のデータすらなく、ラインの大まかな重さすらつかめません。もう一つは、日本に輸入されていないスティルウオーター用シンキングラインがあること。それらについては海外のフライショップなどから買うしかありません。(2022年1月)
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