2021年早春某日。天気良好。今年初めての釣りに行きました。私の個人的な解禁日です。
川からかなり離れた空き地に車を停めて身支度を整え、雪の上をずいぶんラッセルして目的の釣り場に到着しました。河原では冬枯れのアシやヤナギの若木などが雪の上に突き出し、傾きかけた太陽の光を受けてキラキラ輝いています。
予想どおり真冬の間からたくさんの釣り人が入っているようで河原の雪の上は足跡だらけです。川沿いには雪を踏み固めた道ができていました。
たどりついた最初のスポットの前でベースボール・キャップのつばに付けたフリップフォーカルを下げて仕掛けを作っていると、上流から若い男性が一人、大型のミノーがついたロッドを携えて歩いてきました。挨拶を交わし、しばらく上流まですべて釣ったこと、何も釣れなかったことや反応がなかったことなどを聞いて別れました。
先行者がいたとはいえ、今年の第1投めです。上流に入れたフライがしっかりなじんだあたりで、なんとも形容しがたい、しかし明瞭な違和感が伝わってきました。反射的に腕が小さく動き、アワセを入れます。ハリに掛かった魚の頭を上流に向けさせたままサオを曲げ、イトやノットの強さギリギリまで力を加えます。けれど、底に張り付いてほとんど動かずなかなか寄ってきません。
産卵から回復し、エサをたらふく食べた初夏以
降のこの川の大型のマスときたらとんでもない怪力です。とても一筋縄ではいきません。ジャンプを繰り返されてバラしたゲストは数知れず、瞬く間に30mほどラインを引き出されたことも何度となくあります。
はたして、魚はジリジリ下流側のヒラキまで下り、さらに下の瀬へ遁走しようと試みましたが、そこはまだ早春のマスです。寄せては出されとしばらく一進一退したヒラキで、最後は下流に回り込んだ私のネットに無事入ってくれました。
そうだ! マス釣りに明け暮れてW杯まで出場した自称”壮年”ガイドが、流れの中でスムースに大型マスをネットに入れるコツを披露しましょう。ずばり、
”マスの下流側に立ち尾ビレからネットに入れる”
です。他言無用なり。
ポロシリを開業させて10年いじょうこの川を釣っています。しかし、これまでゲストにも私にも58㎝までは何度となく釣れているのですが、この川のいわば”ロクマル越え”は未経験でした。昨今、マスの大きさにはまったくこだわっていないのですが、これは嬉しい出来事でした。
2016年8月、4回の台風が十勝を通過・接近した豪雨災害時の濁流を思い出しました。あれからもう5年です。
↑上の文中に出てきたフリップフォーカル、拡大鏡です。さまざまなものを使いましたが、帽子のツバに付けるものの中ではこれが堅牢性も高く、定番の商品です。
右は、フリップフォーカルを固定するキャッチです。キャッチだけ紛失した際もスペアがあれば本体を使い続けられ経済的です。