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大雨転じて春のスティルウオーターの釣り

春の雨。

 夜半から大雨になった日の翌日、増水の影響もあって朝からあちこち転々とした末、私とAさんが最後に向かったのは湖でした。訪れるのは昨年の10月下旬からおよそ半年ぶり。十勝からはお世辞にも近いとは言いがたい東の湖です。今回は緊急かつ代打的なチョイスだったため、事前に情報を調べることはもちろん相応の準備もなく、まったく何もない状態で向かいました。

 さて、日本でスティルウオーターのフライフィッシングといえばウエーディングの釣りをイメージする人が多いと思いますが、昨今ポロシリが積極的にウエーディングの釣りを選択するのは、限られた条件の時だけ、です。

 2012年の開業間もない頃から積極的にボートの釣りも楽しんできた弊社ですが、世界大会に初出場した2019年頃から米国以外の国々のスティルウオーター・フィッシングの知見やイディオムが加わり、この5年で加速度的に湖の釣りが進化しました。が、今回は雨で二転三転した”都合”から、消極的選択として、湖でウエーディングの釣りをすることになったというわけです。

 

春の湖の定石ってなんだ?

 この日のAさんは、本格的な高番手ツーハンド・ロッドにスペイ系ラインの組み合わせ。私は前日のボートフィッシングでも使ったシングルハンド7番のタックルです。フローティングラインやDi-7など予備のラインが巻かれたスプール数個とフライボックスをパックに入れ、足元にトクサが繁茂する林を抜けて水辺に向かいました。

 天気は晴れときどき曇り。水辺についてすぐの時点で気温は約21℃。表面水温は約10℃です。風は南南西から4mほど。時折、南からの生暖かい風が顔を撫でるように吹いてきます。バックキャスト・ルームもなく、逆風の時はキャスティングそのものが大変でした。後ろがないので前に出たいのですが、マスの行動を考りょしてできるだけ水には入りたくない。そのせめぎ合いの妥協点が私の選ぶ”立つ位置”になりました。 

 私が思う、この時期の湖の釣りの世界基準というべきセオリーの一つは、1回のキャストでできるだけ同じ⚫️⚫️の⚫️⚫️を⚫️⚫️ことです(←お好みの言葉を入れてください。詳しく知りたい方はクリニックにお越しあれ)。あとは、周囲をよく観察しながら、水温とマスの活性をイメージしながら、五感をフルに使って釣り進めていくだけです。

 で、釣りを始めて15分経った頃。一度マスが岸から1mくらいのところまで、しかもフライに唇が触れちゃうくらいフライの真後ろを追ってくるのが見えました。あー、やっぱりいる! フライや釣り方が合っている時は、フライの後ろ追いかけるマスの姿を見たりするものです。

 続投。でも、釣れない。でも釣れそうな気がする?

 開始から30分ほど経ち、そろそろ移動かな? と思い始めた頃でした。遥か先を釣っていたAさんがこちらに歩いて戻ってきました。

「どう? 何か反応あったー?」と声をかけられて「えー? あれからこっちは何にも」と返した時でした。思えば、会話に気をとられてフィギュアオブ8やってた左手が止まったのだと思います。次の瞬間、ぐい! とお辞儀するようにロッドが引っ張られ、気がついた時には条件反射的にセットフックして、魚とのやりとりが始まっていました。なんてオートマチカリーな(笑。

 ティペットは⚫️X。マスは思いのほか強く7番ロッドはバットまで曲げられ、ネットに入れるまでハラハラしました。まあまあのアメマスです。

 55cm。久しぶりのウエーディングでのアメマス。さほど大きいわけじゃないのですが、予定や準備もなく不用意に手持ちの道具だけで、しかも午後から出かけた湖で、その時の条件判断と”運のよさ”で釣れた魚として嬉しい1尾になりました。やっぱり湖の釣りは楽しい!

 たとえば、ロングキャストはできるのに、ライズしていないと湖ではマスが釣れる気がしないとお悩みのアングラーは、一度ポロシリのクリニックの受講をおすすめいたします。良いキャスターがよいアングラーと同義にならないのは、自然や釣りを知らないから。早く、正しく湖とマスを知ることができれば、その分だけ長く生涯楽しめるようになる。それはキャスティングも釣りも同じです。ぜひお気軽にお声がけを。

 なお、このマスの動画は弊社インスタにもアップしています。合わせてご覧ください。フォローもぜひ。

Aさんは大笑いしてるし思いのほか強くてヒヤヒヤものでした。この釣り、ガイド時に湖のクリニックを受講なさっているゲストの中には知っている方がいるメソッドです。一度学ぶだけで生涯この季節の良い釣りをギャランティしてくれます。Photographed by Aさん。
Aさんは大笑いしてるし思いのほか強くてヒヤヒヤものでした。この釣り、ガイド時に湖のクリニックを受講なさっているゲストの中には知っている方がいるメソッドです。一度学ぶだけで生涯この季節の良い釣りをギャランティしてくれます。Photographed by Aさん。
釣れたのは55cmのアメマス。Aさんが測ってくれました。湖のマスとしてはとりたてるほど大きくありませんが、自分の湖の釣りの感覚を確認できたことが何よりのご褒美。考えて釣るのは最高に面白い。Photographed by Aさん。
釣れたのは55cmのアメマス。Aさんが測ってくれました。湖のマスとしてはとりたてるほど大きくありませんが、自分の湖の釣りの感覚を確認できたことが何よりのご褒美。考えて釣るのは最高に面白い。Photographed by Aさん。