写真の1台はハーディ英国本社で生産されたもの。されど、アメリカのS社の名義で販売されたシングルアクションのフライリールです。本家のそれは、王室御用達メーカーらしくMarquisの名で知られていますよね。中身はたぶんおんなじです。まぁー、”平民”の私には、同じものならこっちのほうが落ち着く。ワタシ”侯爵”じゃないですから。
本当のことをいうと、ツーハンド・ロッドやスイッチロッド使う時、私はたいていこれ。サイズが豊富で、デザインは簡素で潔い。ブレーキはクリック式だけど、スプールのリムが外側に露出しているのでパーミングブレーキをかけやすい。すべてが必要にして充分の、大のお気に入りです。
S社のリールときて最初に思い出す人物といえば、アメリカのラニー・ウォーラーさんです。1980年代、同社のVHSビデオシリーズ『Mastary learning system』の1本である『Advancred Fly Fishing For Pacific
Steelhead』を見て初めてその存在を知りました。ダンガリー(シャンブレーかもしれないけど)のシャツを着、赤いバンダナ首に巻いてブラウン管に出てきたラニーさんは、もうサイコーにカッコよかった! 手元のシングルハンド・ロッドには同社のリールがくっついてたっけ。
人というのは、けっきょく幼少期から思春期にかけて思い焦がれたものごとから、死ぬまで離れることができないのかもしれませんね。少なくとも私はそう。若い時に感じた灼けつくような衝動には、匂いとか手触りだとか、感触としてのリアリティがある。でも、世界がインターネットでつながって以降、”LANケーブル経由で知ったものごと”にはそれがない。エモーショナルな思い入れもないし、情報ってだけ。すぐに醒めちゃう。
これは、ほかのハーディ社のリールにしてもおんなじ。高価なヴィンテージだって、ベツニー。
若い頃、憧れた先輩たちが使っていたものや、標準小売価格まで暗記できちゃうくらい眺めた米国メーカーのカタログ、アメリカのF.F.雑誌やビデオなどで見たもの。アメリカという国のフィルターを通して見た、そんな一時代のほんのいくつかの機種だけが、やっぱり私にとって等身大のハーディみたい。それ以外はあんまり。
そうだ! いいアイディアがある。そんなにお金があるなら、十勝でガイド雇って釣りしたほうがいいと思うけど、いかがでしょう。アハハハハ。
ベトナム戦争以前に青春期があった日本人は、イギリスをはじめヨーロッパの文化に直接的な影響を受けている人が多い。フライフィッシングのような舶来の遊びだっておんなじ。そんな先輩たちは「アメリカにはモーツアルトもゲーテもいないじゃん」なんて口々に言う。でも、私はそれ以降の世代。自分らしい道具が、使っていていちばん心地いいのです。
さて、最近更新を続けているウェブログですが、近頃は道具や暮らしのことばっかりですね。でも、本当のことをいえば、モノのことを披露するのは嫌い。”みったくない(北海道弁でみっともないの意)”。
日本のフィッシングガイドというビジネスの特性と、インターネット媒体の特性。その掛け合わせの難しさを実感しています。何かいい方法はないのかなぁー。
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