Balanced Tackle

そのタックル、バランスとれてます?

これまでゲストを案内してきて、最近とみに思うことがタックルのバランスについてです。

 

「釣り道具は魚に近いところから順に考えよ」というのは佳日のさる名手の言ですが、それはフライフィッシングとて同じ。裏技的な方法はあれど、フライフィッシングの場合、最初に使うフライパターン(フライのサイズや重さなど)があって、次にそのフライに見合うティペット、その次にリーダー、その次にライン、ロッド、リール……と決めていくのが肝心要の要諦であり、誰がなんと言おうと、”基本のキ”ということです。

 

バランスを欠いたタックルの例を挙げてみましょう。

フライ:6番の、バルキーなエゾハルゼミのドライフライ

ティペット:4X

ライン:3番

 

一部の、職業的に日々釣りをしているような方、あるいは名手を除けば、上記のタックルでは、ほとんどの場面において、理想的なプレゼンテーションはできないといってよいと思います。理由は、サイズ6番の、相対的に空気抵抗および重量があるフライを、ゆとりをもってさまざまな種類のプレゼンテーションなどを行なうだけの物理的な重さがーーたとえば、音が生じるようなフォルスキャストでマスをスプークさせないよう、最低限のラインスピードで実用的な幅のループを作り、少ない回数でキャストを完了するなどーーもとより、その重さが3番ラインにはないからです。右のいちばん上の表を見てみましょう。

 

3番ラインにマッチングするフライサイズの範囲は、12〜28番とあります(一段下の図では12〜24番)。都合、このレンジの中で、3番ラインがデリバリーするのに適した、最も”旨み”のある真ん中のフライサイズは、16番あるいはそれ以下ということになるでしょうか。ここでいう”旨み”とは、突然の強風時でもタイトループにしてラインスピードを上げられるとか、失速寸前のスピードでもキャストできるとか、さまざまな種類のプレゼンテーションにゆとりをもって対応できること、です。上限の12番を使えば、車にたとえるなら、アクセル全開でエンジンは回転数いっぱい、すでにゆとりはなく追い越しや追い抜きに無理がある状態、と解釈できます。

 

昨今市場には、スティッフなグラファイトロッド向けに開発された半番手重めのラインなどがあります。またフロントテーパー部を短くパワフルに設計したラインがある一方で、フロントテーパーを長く設計されたラインもあります。30フィートの重さが規格外のラインを含め、さまざまなデザインのラインがあるいじょう話はさほど簡単ではありません。例外がたくさんあります。しかしながら、3番ラインには3番ラインに適した仕事があるということは、理にかなったフライフィッシングの道具の仕組み、そして定石として、元来古くから存在しているというわけです。

 

距離にしても同様です。例えばトム・モーガン時代のR.L.Winston社などは、カタログに、up to 45だとか、15 to 45(単位はfeet)というように、番手や長さ、つまりロッドのモデルごとに、それぞれのサオが主たる守備範囲としている釣りの距離まで明記していました。適切なラインを使うことが前提ですが、フライサイズやディスタンスに応じて、快適度の高い定石のバランスはあるのです。

 

さて、上記の6番フライに3番ラインの例にあるような、バランスを欠いたタックルで釣りをすると、フライのデザインや個人差はあれど、結果として下記のようなトラブルやミスが生じることがあります。

 

1、フォルスキャスト時に、マスにスプークされてしまう。

2、ティペットがヨレてチリチリになってしまう。

 

1の理由は簡単です。上に説明したように、3番ラインにはもとより6番のフライをキャストする物理的な重さおよびパワーがありません。したがって、キャストしようとすれば、都合ラインスピードを上げざるを得なくなります。さらに、キャストすべき距離が長ければ長いほど、フォルスキャストの回数を増やさざるをえません。

 

マスはたいていの場合において、上空の鳥などを常に警戒しています。結果として、「ビュン! ビュン!」と音を伴いながらの勢いのあるフォルスキャストの回数が増えるごとに、フライが着水する前にマスが気づいて、スプークしてしまう可能性が増えていくのです。まぁー、マスにフライを見せる前に逃げられてしまっては釣りになりませんね(蛇足ですが、欧米で、洗練された腕利きのガイドの前でこんなタックルを使うと、即座に「オレのタックルを使え!」とロッドをとり上げられてしまうこともあります)。

 

また、6番のフライに4Xのティペットというバランスは、2のトラブルの原因です。フライサイズが6番なら、原則、マッチするティペットは2Xです(参考例として、右下の図を参照)。空気抵抗のある、さらには回転しやすいデザインのフライパターンであれば、ティペットはまたたく間にチリチリに縒れてしまいます。これでは、”釣り”をさせてもらえませんし、釣れません。

 

”ヨレ”のトラブルを予期したうえでティペットのサイズを一つ下げる(いわば裏技ですね)ならともかく、”基本のキ”なしでは、対処も応用もありません。結局、バランスのとれたタックルというのは、スポーツでいう体幹というか、根幹なんですね。

 

日々多くのクライアントと接していると、キャリアの長さに関係なく、上記の、普遍的な基本のバランスをご存じない方がいらっしゃることに気づきます。「趣味だし遊びだからさー、ベツにいいじゃん」(なるほど……たしかに……)。「歴史的な名竿なんだよねー。この竹ザオで釣りたいんだよー」(ウンウン……気持ちは少し……わかる……かなぁ)。

 

しかしながら、困ったことに! 「釣れなくてもオッケーなの!」なんて方には、いまだ会ったことがありません(笑。となれば……タックルは道具=手段であるいじょう……やはりバランスがとれていてこそ、でしょう?

 

普遍的かつ一般的なバランスとして、ポロシリがおすすめしているタックルについては、こちらのページをご覧ください。

フライサイズとライン(ロッド)ウエイトのマッチング(参考例)

ティペットサイズとフライサイズ(参考例)

がんばれ、編集者たち!

過去に、東京でフライフィッシング専門誌の編集者をしていた者として、最近の雑誌を見ていて残念に思うことがあります。

 

一つは、編集部の企画・構成・執筆による、普遍的な、基本のキとなる解説記事がほとんどないことです。釣りの技術の解説記事の多くが、メーカーや小売店など、広告主に関係のある著者および名手の記事頼りになっていて(これはこれでよいのですが……)、いわば世界基準の定石がわからない、あるいは、わかりづらいのです。

 

これでは、読者は、普遍的かつスタンダードな技術のあり方を知ることができません。いってみれば、一部の魚に対応するような裏技あるいは応用は知っていても、表技、つまり、定石の技術や知識を入門者のような読者は知りようがないのです。著名人の言などあまたの情報の中にありながらも、「これが世界のスタンダードな方法です!」と言って民の信頼を得られるのは、今だに影響力のある、メディアおよび編集部によって書かれた記事だけでしょう。にもかかわらず、ちょっと違うけれどーー「社説」を書かない新聞ーーじゃあねー。

 

仕事のフローに、こと日本の業界をたとえてみるなら……ロッドやラインなど釣り道具を作る人や、雑誌や放送媒体などメディアで情報発信している人が業界の最上流とするなら、小売店は真ん中あたりでしょうか。そして、季節や状況を問わず、毎日のように水辺に立ち魚を釣るお手伝いをしている多くのガイドは、いってみれば、業界のワークフローの最下流にいます。ガイドは市井の釣り人と一緒に、ヒリヒリした現実=魚たち、に向き合っています。そして、すべての”ツケ”は、いつも最下流の現場に回ってくるのです。

 

論より証拠に、時間による洗練を重ねたフライフィッシング先進国であるお隣アメリカ合衆国のフライ雑誌の、釣りの解説記事を見てみるとよくわかります。原則、対象魚に接している時間の総計が短いであろう人は、ほとんど露出していません。なぜなら、日々魚のそばにいない人が、読者にとって有益で、ワクワクするような情報や技術などもちようがないことは疑いようもなく、自明の理だからです。そういった意味では、私が編集者をやっていたような国内のコマーシャルなフライ雑誌は今、その存在意義を賭した過渡期なのかもしれません。

 

遠征を夢見て、メディアや小売店の言を参考に、小遣いを貯めて買った釣り道具のバランスが悪かった、そのうえトラブル続出で釣れなかったでは、わがニッポンの市井の釣り人たちは釣りをやめてしまいます。日本のフライフィッシングに未来はありません。でも、それじゃーねぇー。

 

インターネット全盛の時代、たしかに未曾有の出版大不況でしょう。でも、たとえ取材経費や出張経費がなくたって、よい記事を編み集め、ワクワクするようなコンテンツ満載の雑誌作りはできるはず。有能な編集者なら、そこのところわかっているはずです。

 

私自身が雑誌育ちだし、雑誌が好きだから言います。

がんばれ、Tokyoの編集者たち!

 


コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    Garnet Packard (金曜日, 03 2月 2017 07:37)


    This blog was... how do I say it? Relevant!! Finally I've found something which helped me. Appreciate it!

  • #2

    Javier Bushong (火曜日, 07 2月 2017 18:37)


    Hello! I could have sworn I've been to this web site before but after going through many of the articles I realized it's new to me. Nonetheless, I'm definitely pleased I found it and I'll be bookmarking it and checking back regularly!

  • #3

    Renita Zenz (金曜日, 10 2月 2017 06:35)


    Pretty nice post. I simply stumbled upon your blog and wished to mention that I have truly enjoyed surfing around your blog posts. In any case I will be subscribing on your feed and I'm hoping you write once more very soon!